人材教育


  人材教育:リカレントとは?  2021.07.16

リカレント(リカレント教育)とは?

社会人になってからも、学校などの教育機関に戻り、学習し、また社会へ出ていくということを生涯続けることができる教育システムを指す。リカレント(recurrent)には、繰り返しや循環といった意味があり、回帰教育、循環教育と訳されることもある。また、「学び直し」と表現されることもある。

 

リカレントの発端は?

リカレント教育は、スウェーデンの経済学者ゴスタ・レーンが提唱し、1970年代には、経済協力開発機構(OECD)が推進する生涯教育の一形態となった。日本でも、大学の社会人入学制度や科目履修生制度が設置されたり、リカレント教育を促進するための専門職大学院やサテライトキャンパスなどが開講されたりしているが、OECDが2012年に実施した「国際成人力調査」によると、30歳以上の成人の通学率は、参加24カ国中、最も高いフィンランドの8.27%と比べ、日本はその約1/5の1.6%と最も低く、リカレント教育が進んでいないことが明らかとなっている。なお、文部科学省が公開している2015年4月に公開された「社会人の学び直しに関する現状等」の資料によれば、社会人の意識調査においては、89%の人が、再教育を「受けたい」又は「興味がある」と回答しているのだが、「勤務時間が長くて十分な時間がない」、「費用が高すぎる」、「職場の理解を得られない」などの理由で、実際にはリカレント教育を受けられていないという現実がある。

 

今後、急速な少子化高齢化により、労働力人口の減少が懸念される日本では、同時に、健康寿命が延び、100歳まで生きることが普通になる「人生100年時代」がやってくると言われている。2017年9月より、首相官邸において、「人生100年時代構想会議」が開催されており、すべての人に開かれた教育機会を確保し、何歳になっても学び直しができるリカレント教育について議論されている。今後、政府は、経済的な事情などで、高校や大学へ進学できなかった人や、出産、育児で退職した女性、または定年退職した高齢者などが、リカレント教育によって「いつでも学び直し・やり直しができる社会」を目指し、文部科学省は、2018年度の予算において、リカレント教育や職業教育の充実に取り組む大学および専修学校等への支援にあてる予算を増額するなど、具体的な対応を進めている。

 

リカレント教育が注目される背景

高度成長期の日本では、学校を卒業して就職した後の教育は、企業の社員教育で対応している状況が続いていました。しかし、バブル崩壊後企業に社員投資をする余力がなくなり、社員教育の機会がなくなってきました。その結果、新しい知識・スキルを得られる機会がなくなり企業競争力の低迷・生産性の停滞など解決しなければいけない問題が残っています。

 

 

◇ 急激な技術進化・スキルの高度化
近年今までになかった“AI”・“DX”など急激な技術革新が進み、それに伴い仕事環境も変化しています。「これまで通りに仕事をしていては、通用しない」・「これまでと全く違ったスキルが必要になっている」といったことが、多くの企業・従業員にとって課題となっています。技術革新や環境変化に対応するためには、「これまでの知識・スキルのアップデート」・「新たな知識・スキルの習得」が欠かせないようになってきました。そうした知識・スキルを手に入れる手段として、教育と就労のサイクルを繰り返すリカレント教育が注目される要因です。

◇ 雇用流動化
昔は、新卒で入社した会社で定年まで働く「終身雇用」が当たり前の時代でした。しかし最近では転職する人も多く、雇用の流動化が進んでいます。終身雇用時代には、社内教育や実務で仕事に必要な知識を自然と身に付けることができました。しかし、近年は1企業の勤続年数が短くなっているため、「社内教育だけでは必要な知識を習得できない」という課題があります。そのため、いままでのような企業主体の社内教育だけに頼るのではなく、従業員自らが学びの機会を作ることが重要になっています。自分のキャリアプランに合わせて、自ら学習する手段として、リカレント教育が注目される要因です。

 

 

◇ 「人生100年時代」
日本では、平均寿命が延びてきていることにより、「人生100年時代」が始まろうとしています。これまでは、定年前までの世代が中心となって仕事をしてきましたが、人生100年時代では、男女問わず若者から高齢者までみんなが活躍することが求められています。定年制度も60歳でしたが、働く年齢を65歳までの義務化、そして70歳までの努力義務になっており、どんどん引き上げられています。働く期間が長くなることで、定年退職後の再雇用・再就職、育休・産休後の仕事復帰・キャリアアップを目指す人も増えるでしょう。全員が活躍したり、ブランクを乗り越えたりするためには、絶えず新しい知識を身に付けることが大切です。そのため手段として、リカレント教育が注目される要因です。

リカレント教育の対象者

リカレント教育の対象者は、高校・専門学校・大学などで教育を受けた「社会人」です。「社会人として現在働いている人」の他、「社会人として働いた経験のある人」も対象となるので、当然年齢の問題もありません。

リカレント教育で学ぶ内容

リカレント教育では、主に仕事と直結した内容を学ぶことが多いようです。
● 特定の分野を深く追求した研究・学習が可能な内容
● 最先端にテーマを置いた内容
● 幅広い仕事に活用できる知識・技能を習得できる内容  など

 

 

リカレント教育と生涯学習の違い

「リカレント教育」と混同されがちなのが、「生涯学習」です。しかし、その目的と内容が異なります。リカレント教育は「仕事に活かす」ことを目的にしているのに対し、生涯学習は「より豊かな人生を送る」ことを目的としています。また内容については、リカレント教育の場合、働くことを前提に仕事に活かせる知識を学ぶため、趣味や生きがいを目的とした学びは含まれません。一方で生涯学習の場合、仕事に活かせる知識だけでなく趣味やスポーツ、ボランティアなど、仕事に直結しないものも含まれているという違いがあります。

 

国の制度

 



  人材教育:リスキリングとは?  2021.06.21

リスキリング(能力再開発)とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する・させること」を指す。近年では、デジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わる職業に就くためのスキル習得を指すことが増えている。

OJTは「連続系」のなかでの能力開発で、社内に「いまある」部署の「いまある」仕事をしてもらいながら、やり方を覚え、スキルを獲得してもらうためのもの。

一方リスキリングは「非連続系」の能力開発で、社内に「いまない」仕事・「いま、できる人がいない」仕事のため、スキルを獲得するためには、OJT以上の取り組みが必要です。
特に大企業では、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みと同時に、人材育成へのリスキリングも始めている。

ここ数年、世界規模でリスキリングへの関心が高まっています。その背景の1つは、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを加速していることです。デジタル技術を使った戦略転換を実現するためには、その技術を使いながら価値を創造することができるよう、多くの従業員の能力やスキルを再開発することが欠かせない。もう1つは、テクノロジーの導入を通じて自動化が進む結果、個人の仕事が失われる「技術的失業」が現実味を増していることである。
テクノロジーの導入により新しい仕事も生み出されるが、その仕事に就くためにはテクノロジーを駆使して新しい価値を生み出せるだけの知識やスキルを持っていることが必要である。そうしたスキルを持たない大量の失業者が発生することや、その結果として経済格差がこれまで以上に広がることを回避するために、リスキリングは国際機関や各国政府の関心事項となっている。